Aug 14, 2015

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最後の家を離れる前に、今まで暮らした四つの家の事を書きとめようと思います。
宵の実の事を考える時、いつも「家」を思い出します。
「家」という中に漂うもの。
その中にはほとんどの事が満たされ、感動するものがちゃんと在るように思う。

これからの宵の実の何か手掛かりになればという想い。



f o u r  h o u s e s
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一つ目の家

扉を開けたらすぐにリビングのこの家には玄関がありません。
だからその役割を担うポーチ。
私はこのポーチが一番気に入っていて、ある日、石の地面に椅子を置いた。
昼間の時間を過ごすためです。

開けてはいけない物入れと、開けてはいけない扉があった。
外に繋がっているから。
その中(外)の事をどれだけ考えたかな。

靴を履いたまま一日を過ごし、灯りはほとんどなく、
外と同じリズムで廻っているような家でした。
誰がそうしたわけでもなく、この場所がこの場所であっただけのように思う。

それに触ることすら思いつきもしなかった。
 本当に静かな家。

この家では珈琲をよく飲みました。
アデリアのカップ。
琥珀色のカップの中の珈琲は、薄暗い中では赤ワインになる。

やっぱりポーチが好きでした。
しばらくした違う日、貝を削ってできた透き通ったシェードだけを椅子の上に下げました。

家を囲む塀は高く、窓には古い鉄のフェンスがついていて、
そのおかげで見え隠れしていたけれど、
食べてしまいたいものにも沢山気が付いた。
どうしてみても食べれはしないのだけど。

音がないところにこそ音があって、西日にも音がある。

この頃出会った音は、今でも浮かんできます。

薄い水色だった家。


茗荷、 鳩、 水仙、 蕺草、 椿