Aug 14, 2015

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f o u r  h o u s e s
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二つ目の家


ブルーベリーを摘みにいく夏。
家はブルーベリーの街に。

その家から見える丘の上に大きな一本の木があって、
ひとりで住むこの家を、いつも見守ってくれているようでした。
その木の側へ行ってみたくなった。
木だけを目印にして随分歩いたし、坂も登ったし、
木までの道があるのかもわからないから道もつくった。
木の立つ場所。着いたのは夕暮れ。
そこは風の通り道で、街が全部見渡せる、穏やかな場所でした。
そのまわりは、ブルーベリーが育つ場所でした。

今でも、私が何か頼りにしているその木。


家の裏には小川が流れていて、朝早くは野菜の花が咲くのがみえた。
小川を辿ると大きな川は流れていて、空はとまっていて、それはいつもの事で、
馬の散歩道でもあった。

長屋が二棟。平屋が三棟。
空き家になっていくこの場所で野良猫は産まれたし、私も暮らした。
終わりが分っている景色を染めてみたかった。

砂壁は全部絵になって、
黄土色からもっともっと明るく。

この家では毎晩、朝まで料理をした。
料理と向き合い続けた家。
そしてそのまま朝がきて、硝子の引戸が光り、削った砂壁の砂が光りだしたら少し寝て、
それから電車に乗って、くすんだ赤い壁の店でまた料理を夜までつくるの繰り返し。

自然がどんな風に今に在るのか。
近く過ぎるほどに近くに感じた事が、この時は沢山の料理をつくらせてくれたのだと思う。


「ただそこに在ること」を教えてくれた家。



茱、 万作、 花水木、 紫陽花