Dec 8, 2017

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g a l e t t e  d e s  r o i s
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ガレット・デ・ロワ


ひとりは特別でもなく、贅沢でもなく、ごく普通に必要なものを食べる事が難しくありました。
もうひとりは食べられない物があっても他の物を使って満足できる食事がつくれないかと考えはじめました。
いつか二人は離れる事になり、もうひとりはひとりの為に食事をつくることはなくなりました。遠くの国へ。
見送ったその時の、後ろ姿をもうひとりは忘れていません。

思いもしなかった日に、ふとした時間に、もうひとりの場所にひとりが訪ねてきてくれました。
ふたりが会っていた場所はなくなっていたのに会えたのです。
ひとりは花を沢山渡してくれました。
ひとりはまだ必要なものが食べられませんでした。もうひとりは必要なものの代わりをひとりから受け取って食事をつくりました。
その瞬間、もうひとりは代わりではなく食べてもらいたいものをお皿に盛りつけることができませんでした。
ただ、それは食べられるものではないけれど、
音があるのに静かで、薄明るくて、うっとり染み込んでくるような時間がその時流れました。
それがもうひとりの料理でした。

「不思議な時間をつくりたい」

必要な時を必要な時にその人へ。
つくれる身体と軽やかさがほしい。
もうひとりは今でも自分を突き動かす沢山の記憶をもっていたのです。

届けてくれたガレット・デ・ロワが思い出させてくれた事。